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故人名義の契約解除ガイド:銀行、SNS、サブスクまで|ともいき社
ご家族が亡くなったとき、葬儀や役所関係の以外にも、さまざまな手続きをしなければなりません。意外と面倒なのが、故人さまの身の回りのものの解約手続きです。故人さまの生活習慣や趣味によって利用しているサービスはさまざまです。そのなかで代表的な手続きや、残されたご家族を困らせる手続きについて解説します。
葬儀、役所関係以外の手続きにはどのようなものがある?
大切な方が亡くなったとき、ご家族はまず葬儀の準備をしたり役所関係の手続きをしたりすることになります。しかし、実際にはそれだけではなく、故人さまの身の回りのさまざまなものの変更・解約手続きをしなければなりません。具体的には次のようなものがあります。
【一般的なもの】
- クレジットカード
- 銀行口座
- 証券会社
- 公共料金(水道・電気・ガスなど)
- 電話回線(自宅)
- インターネット回線
- 携帯電話
【故人さまの趣味や生活習慣によるもの】
- 新聞・雑誌の定期購読
- 食材や健康食品などの定期購買
- 習い事やサークルなど
- 動画や音楽などのサブスクリプションサービス
故人さまと一緒に暮らしていた方であれば、故人さまがどのような生活を送っていたのかを把握していて、身の回りのものの手続きも簡単にできるかもしれません。しかし、一緒に生活していなかった場合には、故人さまが利用していたサービスを手探りで見つけて、解約していく必要があります。
お金に関係する手続きとは?
故人さまの身の回りの手続きはさまざまですが、特に大切なのはお金に関するものです。故人さまのお金は相続にかかわるからです。また、存在に気付かずに放置していると、損をする可能性もあります。
銀行口座の解約
故人さまが亡くなったら、故人さまの口座がある金融機関に連絡をする必要があります。しかし、訃報を伝えると金融機関では原則として口座が凍結されて預貯金の払い戻しができなくなります。例えば、葬儀費用を故人さまの預貯金でまかなおうと思っていた場合、訃報の連絡をする前に引き出さなければなりません。その場合、あとからトラブルが起きないように相続人となるご家族に相談し、金額や目的などをメモに残していくと良いでしょう。
口座の凍結を解除して解約するには、遺産分割協議書や遺言書など、故人さまの財産の分け方がわかる書類や通帳、戸籍謄本などを持参して手続きを行います。必要な書類は相続方法によって異なるため、一度故人さまの口座がある金融機関に確認することをおすすめします。
クレジットカードの解約手続き
故人さまが使っていたクレジットカードも解約する必要があります。カード会社に連絡し、手続きを進めましょう。クレジットカードの解約に関しては次の注意点があります。
- 早めに手続きしなければ、年会費がかかることも
- 未払い分がある場合には、あとから請求が届く可能性がある
- 付帯サービスを確認する
- ポイントやマイレージは引き継げる可能性がある
- 家族カードを発行している場合には、使えなくなる
クレジットカードには年会費がかかるものもあるので、早めに解約手続きをしたほうが良いでしょう。しかし、解約手続きをする前に確認しておきたいこともあります。まず、クレジットカードの未払い分は、解約しても消滅するわけではありません。カード会社から請求が届くので支払う必要があります。
クレジットカードでは各種保険が付帯サービスになっていることがあります。死亡保険が付帯されているときは請求できる可能性があるので、解約前に確認しておきましょう。また、故人さまがポイントやマイレージなどを貯めていた場合、種類によってはご家族が継承できます。手続き方法は、カード会社に確認すると良いでしょう。
その他、故人さまが本会員となって家族カードを発行していた場合、本会員の解約によって家族カードも同時に使えなくなるので、注意が必要です。
マイレージやポイント引継ぎ方法
近年「ポイ活」といって、マイレージやポイントを貯めている方が増えています。故人さまのマイレージやポイントはどのようになるのでしょうか。
マイレージ
航空会社のマイレージは、所定の手続きにより相続に人に引き継ぐことが可能です。国内大手航空会社の対応は次の通りとなっています。
【日本航空(JAL)】
会員が亡くなった場合、法定相続人は所定の手続きによりマイレージを相続可能です。合意書・対楷書・被相続人の除籍謄本、もしくは戸籍謄本のコピーを揃えて以下に送付する必要があります。
〒143-6590 東京都大田区東京流通センター内郵便局私書箱158号 JALマイレージバンク事務局「マイル相続係」
※参照:JAL | ご利用案内・お手続き
【全日空(ANA)】
マイレージの相続に関しては、電話にて手続き可能です。0570-029-767へ電話し、手続き方法を確認してください。
ポイント
ポイントの相続については、会社によって取扱が異なります。楽天ポイントやTポイントなど、多くのポイントは一身専属という扱いになっていて、相続することができません。一方、家電量販店のポイントサービスでは、ご家族が保有するポイントと合算することで引き継げることもあります。
対応が各社異なるため、故人さまがポイントを貯めていた場合には、個別に問い合わせをしましょう。
故人さまの趣味や生活習慣に関連する手続きには何がある?
故人さまの趣味や生活習慣に関連して、解約の手続きをしなければならないものもあるでしょう。故人さまが社交的で多趣味な方だった場合、さまざまな定期購入や習い事などの契約をしているかもしれません。故人さまの生前の生活を振り返って、手続きする必要があります。
新聞・雑誌の購読
新聞や雑誌などを購読していた場合、同居のご家族が不要であれば解約しましょう。新聞であれば最寄りの販売店に連絡します。雑誌は同梱されている問い合わせ先に連絡すると良いでしょう。
習い事・サークルなどの月謝や年会費
故人さまが習い事に通っていたりサークルに入ったりしていた場合、月謝や年会費を支払っている可能性があります。なかには銀行口座から自動引き落としになっているケースもあるので、銀行関連の手続きをする前に解約したほうが良いでしょう。
サブスクリプションサービス
サブスクリプションサービスとは、動画や音楽などを毎月定額で見放題、聴き放題できるサービスです。さまざまなサブスクリプションサービスがありますが、特に有名なのは次の3つです。
- Netflix(ネットフリックス)
- Amazon Prime(アマゾンプライム)
- Spotify(スポティファイ)
毎月決まった日にちに月額利用料を支払う設定になっているので、早めに解約しましょう。どちらもインターネット上のサービスで、IDやパスワードが必要です。故人さまがエンディングノートにパスワードなどを記載していないか確認すると良いでしょう。
健康食品などの定期購買
健康食品や飲み物などを、定期的に届くように契約していることもあります。商品と一緒に封入されている問い合わせ先などを確認し、解約するようにしましょう。
故人さまのスマートフォンまわりの手続きはどうする?
ここ数年で、スマートフォンは生活に欠かせないアイテムになりました。若い世代だけではなく、シニア世代でもスマートフォンを使っている方は増えています。コロナ禍を経て、離れたご家族との連絡ツールとしてスマートフォンを持ち始めたシニアも多いようです。
便利で個人情報が詰まったスマートフォンも、所有者本人が亡くなったときの手続きが煩雑なものの1つです。「デジタル遺品」と呼ばれ、残されたご家族を悩ます故人さまのスマートフォンまわりの手続きについて解説します。
そもそもスマートフォンを開けられない場合の対処法
本人でないと確認できないように、スマートフォンはロックがかかるように設定されているのが一般的です。生体認証といって顔や指紋などが設定されている場合、本人がスマートフォンの前にいなければロック解除できません。故人さまのスマートフォンを閲覧することは、プライバシー保護の観点から考えるとあまり好ましいものでは亡いかもしれません。しかし、故人さまの身の回りの手続きをするためには、ロック解除する必要があります。
生体認証ができなくても、ご家族がPINやパスワードを知っていれば、スマートフォンはロック解除できます。エンディングノートに書かれていないかチェックしたり、いつも故人さまが使っているパスワードを入力したりすると、解除できる可能性があります。また、スマートフォンの契約書にメモ書きしている可能性もあるので、そういった書類を確認すると良いでしょう。
パスワードの予想がつく場合には良いものの、何度も誤ったパスワードを入力しているともっと強固なロックがかかり解除できなくなる可能性があります。携帯電話会社では、スマートフォンの初期化はできても、データが入っている状態で解除することはできません。
ご自身もご家族も万が一のためにPINやパスワードを設定し、エンディングノートや手帳などに記入しておくと良いでしょう。もし高齢のご両親がスマートフォンを所有している場合には、パスワードの設定を手伝うこともおすすめです。
デジタル遺品への対応
スマートフォンの内部データには故人さまの個人情報がたくさん入っています。スマートフォンだけでなく、パソコンやDVD、SDカードのデータもデジタル遺品と呼ばれ、どのように管理・処分したら良いのか残されたご家族を悩ませるでしょう。
まずはスマートフォンの解除をすることが重要ですが、ロック解除ができたあとは次のようなものへの対応が必要となります。
- 写真や動画
- メールやチャット履歴
- 故人さまの知人・友人の連絡先
- インターネットバンキング・ネット証券
- ネットショッピングのアカウント
- アプリ内の有料サービス
- クラウドサービスやそこに保存したデータ
- SNSとそこに投稿したデータ
スマートフォン内のデータから故人さまの交友関係や生活を知ることができ、訃報を伝えるべき方がわかるかもしれません。写真や動画などは処分するか保存するかを決めていきましょう。
インターネット上のサービスを利用している場合には、それぞれ解約する必要があります。解約にはIDやパスワードなどが必要なので、1つずつ片付けていきましょう。
すべての手続きが完了して必要なデータを取り出したら、セキュリティの観点からスマートフォンのデータは削除して初期化することをおすすめします。
故人さまが使っていたSNS・ブログを閉鎖する方法
故人さまがSNSやブログを利用していた場合、放置しているとアカウントが乗っ取られたり荒らされたりすることがあります。SNSによっては利用者がご逝去したときのための設定があります。代表的なSNSの手続きは以下の通りです。
【Facebook】
故人さまのアカウントは「追悼アカウントとして残す」もしくは「完全に削除する」のいずれかから選択することになります。追悼アカウントとして残す場合には、名前の横に「追悼」と表示され、故人さまの投稿はそのままの状態で残ります。ご家族が管理人になることで追悼メッセージを残すこともできるので、SNS上でつながった方々が故人さまを偲ぶ場となるでしょう。
アカウントを完全に削除する場合には、故人さまが亡くなったことや依頼主との関係を証明する書類の提出が必要です。
※参照:亡くなった家族のFacebookアカウントについて削除をリクエストする | Facebookヘルプセンター
【X(旧Twitter)】
Xでは利用者がご逝去した場合、ご家族からの依頼によって削除可能です。追悼アカウントの設定はできませんが、ご家族が書き込むことで故人さまが亡くなった旨をフォロワーに使えることができます。
※参照:自身での対応が難しい利用者や亡くなられた利用者のアカウントの停止 (twitter.com)
【Instagram】
故人さまのアカウントはFacebookと同様に「追悼アカウントとして残す」もしくは「完全に削除する」のいずれかを選択できます。どちらに設定する場合も、故人さまが亡くなったことを証明する書類の提出が必要です。
※参照:亡くなった方のInstagramアカウントを報告する | Instagramヘルプセンター (facebook.com)
ネットバンキング・ネット証券に注意!
故人さまのデジタル遺品からネットバンキングやネット証券の利用がわかった場合、注意すべきことがあります。ネットバンキングやネット証券には故人さまの財産が含まれているため、相続にかかわる可能性があるからです。
まず、ほかの相続人に相談なくネットバンキングやネット証券の手続きをすると、あとからトラブルに発展することがあります。ほかの相続人に相談のうえ、手続きを進めましょう。
また、相続税の申告期限はご逝去を知った翌日から10カ月以内となっています。故人さまがネットバンキングやネット証券を利用していたことがわかったら、早めに財産を把握するようにしましょう。
故人さまの身の回りのものがわからない!解約すべきサービスの探し方
故人さまの身の回りのものがわからず、解約すべきサービスが何なのかわからないというケースも多いでしょう。最近では、銀行口座も通帳が発行されないものがあるため、手続きすべきものがわからないというケースも増えています。故人さまの利用していたサービスを探すときは、次のようなものを手掛かりにすると良いでしょう。
- 郵便物
- 受信箱に保管されているメール
- 自宅にあるノベルティーなど(タオル・食器・ボールペンなど)
まとめ
葬儀や役所関係の手続き以外の、故人さまの身の回りのものの変更・解約手続きについて解説しました。故人さまと離れて暮らしていて、生前どのような生活を送っていたのかがわからない場合、残された家族は故人さまの生活の痕跡を手探りで見つけることになります。特にスマートフォンは故人さまの情報が詰まったアイテムです。ロック解除をしなければできない手続きもあるので、注意が必要です。 最も良い対策は「生前のうちにご家族と生活習慣について共有すること」です。離れて暮らすご家族がいる場合には、元気なうちにコミュニケーションを取ることを心掛けると良いでしょう。