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遺産相続の手続きについて|ともいき社

遺産相続とは、故人さまが所有していた財産をご家族などが継承することです。人はどのような方でも何かしらの財産を持っています。現金、預貯金、不動産、貴金属類など、財産にはさまざまなものがあるでしょう。それらの財産について、何を誰に分けるのかを決めて継承するのが遺産相続です。また、故人さまの残した財産の金額によっては、相続税を納付する必要があります。相続税申告の期限は、故人さまがお亡くなりになった日の翌日から10カ月以内です。相続放棄をする場合には、ご逝去から3カ月以内に申述する必要があるので、早めに手続きを進めていきましょう。

そもそも遺産相続の手続きは誰がすべきことなの?

生前故人さまと親しくしていた家族であっても、みんなが遺産相続する権利を持っているわけではありません。遺産相続の対象者や相続税を納付すべき人が誰なのかについて解説します。

法定相続人の順位

故人さまとの関係性によって、相続人や遺産を取得できる割合は民法によって定められています。まずは、故人さまの配偶者がいる場合、必ず配偶者は相続人になります。

それ以下の順位は次の通りです。

  • 第1順位:直系卑属(子や孫など)
  • 第2順位:直系尊属(両親や祖父母など)
  • 第3順位:兄弟姉妹

故人さまに子どもがいれば、子どもが相続人になります。子どもがいなければ、両親に相続権が移ります。子どもも両親もいない場合は、兄弟姉妹が相続人です。また、代襲相続といって、故人さまよりも先に子どもが亡くなっていたら、孫(亡き子の子ども)が相続人になります。直系卑属の場合は、相続人に該当する人が先に他界していたら、代襲相続によって孫・ひ孫と相続権を引き継ぎます。兄弟姉妹が故人さまよりも先に亡くなっていた場合には、甥や姪(亡き兄弟姉妹の子)が相続人です。兄弟姉妹の場合には、代襲相続は甥・姪の代までとなっていて、甥や姪の子どもは法定相続人になりません。

民法では、相続人と故人さまとの関係によって遺産相続できる割合が定められています。これを「法定相続分」といいます。相続人ごとの法定相続分は次の通りです。

相続人法定相続分
子がいる場合配偶者2分の1
2分の1(人数分に分ける)
子がいない場合配偶者3分の2
父母3分の1(人数分に分ける)
子も父母もいない場合配偶者4分の3
兄弟姉妹4分の1(人数分に分ける)

※出典:国税庁「財産を相続したとき」

法定相続分は上の表の通りですが、相続人同士が納得していれば遺産の分割方法は法定相続分と異なっても構いません。

法定相続分の具体的な計算

法定相続分通りに遺産分割する場合、次のようになります。

【配偶者と子ども2人が相続する】

夫が亡くなり、妻と2人の子どもが5,000万円の遺産を相続する場合、法定相続分通りに分けると次の通りです。

妻:5,000万円×1/2=2,500万円

子1:5,000万円×1/2×1/2=1,250万円

子2:5,000万円×1/2×1/2=1,250万円

【配偶者と父母が相続する】

子どもがいない夫婦の夫が亡くなり、妻と父母が4,800万円の遺産を相続する場合、法定相続分通りに分けると次のようになります。

妻:4,800万円×2/3=3,200万円

父:4,800万円×1/3×1/2=800万円

母:4,800万円×1/3×1/2=800万円

【配偶者と姉・甥・姪が相続する】

子どもがいない夫婦の夫が亡くなり、夫の両親と弟も先に他界していた場合を想定します。妻と姉、弟の子ども2人(甥・姪)が4,800万円の遺産を相続するとき、法定相続分通りに分けると次のようになります。

妻:4,800万円×3/4=3,600万円

姉:4,800万円×1/4×1/2=600万円

甥:4,800万円×1/4×1/2×1/2=300万円

姪:4,800万円×1/4×1/2×1/2=300万円

法定相続人ではない人

故人さまと親しい関係性だったとしても、法定相続人ではない人もいます。次のような関係の方は、相続人ではありません。

  • 内縁関係にあるパートナー
  • 子どもの配偶者
  • すでに離婚している元配偶者
  • 養子縁組をしていない配偶者の連れ子

上記にあたる人に相続をさせたい場合には、生前のうちに遺言書を残しておく必要があります。

相続税の申告が必要な人はどんな人?

相続する遺産が一定以上の価額だった場合、相続税の申告が必要となります。このため、遺産相続をした人全員が相続税を納付するというわけではありません。

実際に相続税を納付しているのは全体の1割弱

実際にどのくらいの人が相続税を納付しているのかが気になる方も多いでしょう。

国税庁が発表した「令和3年分 相続税の申告事績の概要」によると、すべての相続件数のうち相続税を課された割合は9.3%でした。つまり、相続税を納付しているのは全体の1割に満たない人のみです。

相続が発生すると相続税を心配する方が多くいますが、実際には相続税の納付をしなければならないのは少数の人だと知っておくとよいでしょう。

基礎控除額よりも相続財産が多いケース

相続税の申告や納付が必要なのは、遺産の総額が基礎控除額よりも多い場合です。相続税の基礎控除額は次の計算式で算出します。

3,000万円+600万円×相続人の人数

つまり、相続人が1人の場合、基礎控除額は3,600万円です。相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円になります。このように、相続人の人数が多いほど基礎控除額が増える仕組みになっています。

また、相続税には基礎控除以外にもさまざまな特例や控除があります。遺産総額が基礎控除額よりも多かった場合でも、相続税を納付しないで済んだり税額を抑えたりできることがあります。

遺産相続、相続税申告までの流れ

遺産相続や相続税申告について、手続きの流れをご紹介します。

ステップ1:遺言書の存在を確認する

最初にしなければならないことは、故人さまが遺言書を残しているかどうかを確認することです。故人さまが遺言書を残している場合には、原則的に遺言書に書かれた通りに遺産分割を行います。

故人さまから遺言書を作成した旨を聞いている方がいれば、金庫や書棚などを探してみましょう。もし遺言書が見つかった場合「検認」という手続きをして、本当に故人さまが書いたものなのかどうかを確認する必要があります。このため、遺言書を見つけたときは開封せず、家庭裁判所に持参します。

遺言書を預かる機関として、公証役場と法務局があります。故人さまが遺言書を作成したはずなのに自宅や会社などで見つからないときは、この2つの機関に問い合わせしてみましょう。

ステップ2:法定相続人を確定させる

遺言書がなかった場合には、法定相続人で分割方法を話し合って遺産相続をすることになります。このため、誰が法定相続人なのかを確定させる必要があります。

法定相続人を知るためには、故人さまの出生から死亡までの戸籍をたどります。戸籍を確認すると、場合によってはご家族が知らなかった故人さまの隠し子や養子、生き別れた兄弟姉妹などの存在が明らかになることがあります。疎遠であっても相続人に該当する人がいる場合には、遺産分割協議に参加してもらうことが必要です。疎遠になっている相続人がいるときは、相続開始後すぐに連絡を取ります。

ステップ3:相続財産をすべて洗い出し、現金価値を算出する

遺産相続を行う際に重要なのは、故人さまがどれだけの財産を所有していたかを把握することです。故人さまの遺産には現金、預貯金、不動産、有価証券などが含まれます。事業を行っていた場合は、その事業も評価対象です。不動産や有価証券などは、現金化した場合の価額を算出します。また、住宅ローンや借入金などの負債も財産の一部です。相続では、プラスの財産もマイナスの財産も継承することになります。

もし、マイナスの財産が多く相続が不利になる場合、「相続放棄」を検討したほうが良いかもしれません。相続放棄をするためには、ご逝去日の翌日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。そのため、故人が亡くなってから3ヶ月以内には故人の全財産を把握することが重要です。

また、「限定承認」という方法もあります。限定承認では、プラスの財産で相殺できる分を上限にマイナスの財産を継承します。遺産の総額がわからない場合や相続したい財産がある場合には、限定承認を選択すると良いでしょう。

ステップ4:遺産の分け方を相続人全員で話し合い、遺産分割協議書を作成する

故人さまの財産をすべて洗い出したら、どの遺産を誰に分けるのかを決めていきます。これを「遺産相続協議」といいます。遺産分割協議の結果、相続人全員が納得できれば「遺産分割協議書」を作成しましょう。遺産分割協議書は、誰が何を相続したのかを記載した書類です。遺産分割協議書には、相続人全員の記名と押印が必要です。

ステップ5:相続税の申告、納付を行う

遺産分割協議書をもとに、相続税を計算していきます。相続税の計算は複雑ですが、国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」で相続人の人数や各財産の価額などを入力すると、相続税の申告が必要かどうかや、納付しなければならない税額がわかります。あくまでも目安ですが、使ってみると良いでしょう。

相続税の計算ができたら、故人さまが亡くなったときの住所地を管轄する税務署に相続税申告書を提出します。ご逝去から10カ月が相続税申告の期限なので、注意が必要です。

遺産相続をする際に知っておきたいこと

あとからトラブルにならないように、遺産相続時に知っておきたいことがあります。まだ相続が発生していない方も、該当しそうな項目がある方は対策をしておくと良いでしょう。

不動産など分割しにくい財産の価額が大きい場合は要注意!

故人さまの遺産に不動産など分割しにくい財産が多い場合には、注意が必要です。相続人にうまく遺産分割できず、不公平感が出る可能性があるからです。また、不動産価値の高い不動産や建物を持っている場合には、相続税が高くなるため、現金資産がなければ税金の納付ができないケースもあります。

不動産は売却し現金化することで、相続人に分割することもできますが、そのまま相続してほしいと考えている場合には、生前のうちに遺言書を作成して継承先を指定すると良いでしょう。また、トラブルが起きないように、弁護士や税理士、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

相続税にはさまざまな特例措置や特別控除がある

相続税にはさまざまな特例措置や控除があります。このため、遺産総額が基礎控除額を超えていても、相続税を軽減できる可能性があります。主な特例措置や特別控除は次の通りです。

  • 配偶者の税額軽減:配偶者は遺産額1億6,000万円、もしくは法定相続分相当額までは相続税がかからない
  • 未成年者控除:18歳未満の相続人がいる場合、「18歳に達するまでの年数×10万円」が控除される
  • 障害者控除:障害を持った相続人がいる場合、「85歳に達するまでの年数×10万円(特別障害者の場合20万円)」が控除される
  • 贈与税額の控除:相続開始前3年以内の贈与財産の価額、もしくは相続時精算課税の定期用を受ける贈与財産の価額に対する贈与税額が控除される
  • 小規模宅地:故人さまの事業や住まいなどに使っていた土地のうちは一定の要件を満たせば減税される

特別控除によって相続税を納付しなくて済む場合でも、相続税の申告は必要です。特別控除には要件があるので、しっかり確認してから適用させましょう。

相続放棄をする場合には遺品整理や形見分けに注意が必要

相続放棄や限定承認をする場合には、遺品整理や形見分けに注意が必要です。相続放棄や限定承認をする前に勝手に遺品を処分したり売却したりすると、相続するものとみなされて相続放棄ができなくなる可能性があるからです。形見分け遺品の処分と同等に考えられるため、相続放棄をする際は原則的にできません。

しかし、故人さまが賃貸物件に住んでいた場合など、部屋の片付けを迅速に進めなければならないケースもあるかもしれません。こういった場合には、弁護士などの専門家に相談して、相続放棄をできる方法を確認してください。

まとめ

遺産相続の概要や相続税の納付までの流れを解説してきました。人が亡くなると相続は必ず発生します。生前に故人さまが遺言書を残していれば、原則そこに記載された通りに遺産を継承することになります。遺言書がなければ、法律で定められた通りに遺産を分割するのが基本です。故人さまとの関係性によって相続できる人や割合は変わってくるので、まずは戸籍をたどって法定相続人を確認します。

相続税の納付が課されるのは、すべての相続事績のうち1割弱のみです。故人さまの全財産を洗い出すのは大変ですが、焦らずに資料を集め、相続税の申告に備えましょう。


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